∈∋∈∋∈∋ 周辺を考慮しない ∈∋∈∋∈∋
わたしがまだ住宅メーカーに勤めていた2003年の頃の話です。
一本の電話が営業部に鳴り響きました。
先方
「あ~もしもし?お宅のチラシを見て電話しているんだけど、お宅の建物は他のメーカーに較べてずいぶん安いけど、なんかカラクリでもあるのかい?」
営業
「お電話ありがとうございます。我が社は他のメーカーと違って材料や人材を外注せずに中間マージンを省いて、少しでも安く家を建てることが出来るように工夫しておりますので、そういった関係でお安くなっております。」
先方
「うんうん、良く聞く話だな。で、おたくの展示場は何時までやっているんだ?」
営業
「お越しになる時間をお知らせいただければ、展示場を開けてお待ちしており
ます。」
先方
「あまり遅くなるとこっちも疲れるから、自宅に来てもらえ
ないかな?」
営業
「もちろんお伺いさせていただきます。それではご住所お名前電話番号を…」
先方
「住所は○○市○町1234-5、名前は□□、電話は×××-×××、実は近所に良い土地を見つけたので、今日不動産業者と土地の売買契約をしたばかりなんだ。自宅に来る前にその土地を見てきてくれないかな?その上でいろいろ提案してくれると良いな。買った土地の住所は○○市△△町・・・」
営業
「ハイ!わかりました。それでは後日お伺いいたします。ありがとうございまし
た。」
と、こんな会話がわたしのすぐ横の上司の机で交わされていました。
そして電話を切った後にすかさず上司がわたしに言ってきました。
「この客、結構簡単に決まりそうだな。お前一緒に同行しないか?」
と。
あまり気は進まなかったのですが、上司と同行したことがほとんどなかったので、良い機会と思い同行させていただくことにしたのです。
そして訪問日。
あらかじめ聞いていた、既に契約されたとされる土地を見に行ったところ、土地の形状も平坦で間口も広く、全面道路も6mはあり、まったく言うことはありません。
わざわざ見に来なくても、土地の形状がわかる図面があれば十分なくらい形の良い土地でした。
「こんなきれいな形をした土地なら、良い提案ができそうだな」
と、上司。
わたしも同感とうなずきました。
しかし、何かが気になりました…。
どこからとも無く聞こえるジリジリと焼けるような音。
「何だ?この音は」
わたしは、ハッと思い空を見上げました。
空には高圧の送電線がその土地の真上を通っていました。
少し小雨まじりの日だったので、電線からジリジリと音がしていたのです。
わたしは上司に言いました。
「高圧線が真上を通っているから、現地を見に行ってほしいと我々に依頼したんですね。これは何らかの対策を講じた提案をしないといけませんね。何らかの考慮をした家を提案しないと病気になっちゃうかも知れませんよ」
すると上司は
「高圧線が上を通っていることを承知で買ったんだし、たぶんその関係で結構安い価格で購入できたんじゃないか?そこまで我々が首をつっこむ必要はないだろう。何かあれば土地を売った不動産屋が対応すれば良いんだよ。我々は家を売る立場なんだから。」
そして、お客様宅に到着、おじゃまさせていただきリビングにていろいろとお話をしたのです。
一通り当社の理念や施工例などを見せ、だいぶお客様もその気になってきました。
そして最後に上司が
「よろしければあの土地にあった建物プランを作成させていただければと思いますが、いかがでしょうか?もちろん無料で作らせていただきます!」
お客様
「じゃ、せっかくだから作ってもらおうかな?期待しているよ」
土地の測量図をお客様からいただき、デザイン部門にプランを作らせました。
デザイン部門はデザインが専門ですからそれはそれはきれいに美しくプランニングします。
しかし、高圧電線に対するプランはされていませんでした。
わたしは上司に言いました。
「高圧の送電線は強い電磁波を出しているのだから、それに対する素材を積極的に導入するプランを盛り込まないと、土地にぴったり合ったプランとは言えないんじゃないですか?」
すると上司。
「だから、そういったことを承知であの土地を購入したんだから、我々がとやかく口を挟まなくたって良いんだよ。逆にそんな提案したら家の価格が高くなっちゃって契約してもらえなくなるだろ?」
この上司の解釈が大きな間違いであることは、誰でもわかると思います。
しかし、意見をしても聞く耳を持ち合わせていないようで、最後には私を同行させずに一人でお客様のご自宅にプランを持って伺ったのです。
数日後、上司が血相を変えて言ってきました。
「おい!おまえこの間高圧電線やら電磁波やら素材の提案がどうのこうのって言ってたな?あれ、今すぐ提案書として作ってくれないか?」
どうやら、お客様にプランを気に入ってもらうことができなかったようです。
その時は私も別のお客様の対応に追われていたので時間が取れず、上司の提案書作成に協力できなかったのですが、その上司は他の営業員を引きずって、高圧電線や電磁波に対する提案を出させていました。
結局そのお客様は当社ではなく、大手△△△ホームで家を建てることにしたようです。
後日、家の基礎を着工したところを見計らって、わたしひとりでそのお客様のところに伺いました。そして、なぜ当社にしていただけなかったのか、と△△△ホームに決めた理由を伺いました。
返ってきた回答は思った通りでした。
土地を検討していた時、送電線が真上を通っていることを気にされたご主人が、その土地を販売した不動産会社にその旨を話したら、
「送電線があるせいで土地を安く購入できるので、その分建物にお金をかけても良いのではないでしょうか?そして、送電線に対する提案をしてきた住宅メーカーで家を建てれば良いのですよ。」
と言ったそうです。
こういった環境の土地を見て、この環境にあった提案が出来ないようなメーカーで家を建てるようなことは絶対しないように!、と念を押されたそうです。
△△△ホームさんはとにかく高圧線から放出される電磁波を吸着するために「炭」を丹念に盛り込んだ提案をしてきたそうです。
床下に敷く炭だけでなく、その土地そのものにも炭を効果的に埋設する「イヤシロチ」を考慮した提案、もちろん室内の四隅に炭を配置できるようにあらかじめ棚を作ったり、ありとあらゆる場所に電磁波を効果的に吸収するような提案をしたそうです。
お客様ははじめから我々が出す提案を試すつもりだったのです。
そして電磁波や高圧電線のことをどこまで理解しているかも。
しかしそんなことは当然です。
だってこれからそのお客様は高圧電線の下に何十年も住むのですから。
真上を通っている送電線から出る電磁波をまったく考慮しないような住宅メーカーは家を建築する資格などありません。
でも、まだこの会社、存在しています。この上司は辞められたそうですが…。
とにかく、みなさん注意してください。