建築現場

大工の教育・育成が積極的な住宅メーカーは信頼できるといえる

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住宅メーカーは自社の建物を建てる大工をどのようにして決めているのか?
わたしが勤めていた住宅メーカーでは、大工をこちらの要望で直接決めることはできません。
それは、会社が提携している工務店に建築を依頼することがほとんどだからです。
提携している工務店では大工のほとんどが請負契約です。
ですから、わたしたちはそれら提携している工務店と請負契約している大工と工事現場以外で会うことはありません。

木造の在来工法【軸組工法】では大工の腕によって建物の善し悪しが決まると言っても過言ではありません。
確かに最近ではプレカットと言って建物に使用する木材をあらかじめ工場でコンピュータ制御によるカットをしているため、建前(上棟)の際に組み立てがうまくいかないことはほとんどありません。
しかし、あくまでもプレカットは主要構造部分だけであり、野物材と言われる木材は大工の手で現場にて加工されるわけです。

正しい施工をおこなっているか

大工によって工事の手順が違う場合もあります。
例えば、床材を先に張る大工と壁部分の耐火ボードを先に張る大工とがいます。
これはどちらが良い(正しい)のでしょうか?
正しいのは耐火ボードを先に張る方法です。
理由は、文章で説明するのは難しいのですが、床材を先に張ってしまうと壁部分が耐火ボードで囲えなくなるからです。
床材を施工する際、壁面に隙間が出ないように壁面に突き当てて張りますが、先にフローリングを張ってしまうとその突き当てた壁面部分に耐火ボードが張れません。
そうすると居室内が防火区画にならなくなってしまいます。
防火・準防火地域で上記のような施工をすれば、基準に則っていない施工となってしまいます。

それだけでなく、床と壁の取り合い部に『巾木』を取り付けますが、フローリングを先に張って、後から耐火ボードを貼った場合、掃除機などが巾木に当たるとボードの石膏カスが巾木の下から出て来る場合があります。
カットしていない真物の耐火ボードを使用していればこんなことにはなりませんが、中には節約のため耐火ボードの端切れを使うことがあります。
そうするとカットした部分から石膏が落ちてきます。
掃除機が巾木に当たるたびに巾木の下から白い石膏ボードのくず粉が出てきます。
これはいただけないことです。
もちろん、先にフローリングを張ったとしても、あらかじめ壁とフローリングの間にボードを張る隙間を設ければ問題ありません。
でも、わざわざそんな面倒なことをするくらいなら、先に耐火ボードを張れば良いわけです。

紙切れ同然のマニュアル

実はこういった施工手順なども、住宅メーカーにはきちんとしたマニュアルがあります。
しかしこのようなすぐに隠れて見えなくなってしまうような部分は、マニュアルに従っていない場合が多々あります。
こうなるとマニュアルなんて紙切れ同然です。

本来なら住宅メーカーと提携している工務店が大工を教育して、このようなことが起こらないようにするのが当然ですが、最近は在来住宅(軸組工法)を施工できる大工の数が少なくなってきて、工務店も大工集めに四苦八苦しているのが現状です。
数少ない大工に厳しい縛りを作って、さらに施工単価が安いとなれば、腕に覚えのある大工ならとっとと鞍替えをしてしまうでしょう。
ですから工務店はすぐにやめてしまうような大工のために、わざわざ時間や経費を費やしてまで教育しなくなっていくのです。

棟梁と呼べる大工がいない

大工は棟梁が厳しく弟子を育て、そして一人前になって出て行くと言うのが昔からの流れですが、最近は棟梁と呼ばれる人たちが優しくなって、仕事に対する厳しさも薄れてきているようです。

わたしが現役の頃、お客様の家を建築していた時のこと。
建築現場に大工が4人ほど現場に入っているとのことで、3時の休憩時間に合わせてお茶とお菓子を差し入れに行きました。
休憩しているはずの大工達は、その時建築中の建物の柱を囲んでなにやら笑っていました。
何を楽しんでいるのかそばに寄って見てみると、10センチほどの長さの大きな釘を、建築中のお客様の家の柱に軽く打ち付けて、思いっきり釘をトンカチで打ち付けて1回でどこまで深く打ちこめるかを3人で競い合っていました。

そしてそのすぐ横で、三人の弟子たちの姿を笑いながら見ている棟梁がいました。

この行為を黙って見ておれず、棟梁に対して憤怒しました。
まったく意味のないことでお客様の建物を傷つけ、その家を責任持って建築しているはずの棟梁までもが笑って見ているという、この情けない風景にわたしは肩を落としました。
いくら隠れて見えなくなってしまう柱とはいえ、こういう行為を見逃すことは出来ません。
もしこの光景をお客様が見たらなんと思うことでしょう?
その結果、どのような責任が発生するのか予測できない上、叱ることすら忘れてしまった棟梁。
弟子の拒絶反応にあうのを恐れ、棟梁が弟子の仲間入りをしているのです。
こんな棟梁は大工とは言えません。

今すぐ工事現場を見よう

建築を真剣に検討されている方や、すでに建築を開始している方は、今すぐ工事現場に行って棟梁と呼ばれる人とその弟子の会話を聞いてみてください。
弟子の棟梁に対する言葉使いで棟梁の資質はだいたいわかります。
仕事に厳しい棟梁は、工事現場にラジオを持ち込み聞きながら仕事することを許しません。

大工の育成は大工が行うものですが、そういった育成を励行し、しっかりとした基準を持って仕事をお願いしていない住宅メーカーが多いのには本当に驚かされます。

その一方、自社で大工を育てている住宅メーカーは信頼できると言えるのではないでしょうか。

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