住宅知識地域ビルダー

忙しくて打ち合わせ出来ないと言って顧客の工事を進めない担当者

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営業という職種は、どうしても新規契約を優先してしまうのが常。
見込み客追客には余念がないが、既契約客の工事進捗状況をどうしても後回しにしてしまう傾向が見受けられる。
大手メーカーなら、職種のバトンタッチが明確なので、営業が工時進捗状況を把握していなくても大きな問題にはならない。
しかし中小のビルダーとなると、そんなに人件費をかけられないところが少なくないためそうもいかない。
時には営業が仕様の打ち合わせまで行っているところが少なくない。
仕様の打ち合わせ後に着工指示をかけて、現場監督にすべてを委任するわけだが、着工後も内装材などの細部仕様の打ち合わせは営業が行う。

基礎完成後工事が進まない

営業所に一本の電話が入った。
既契約者からの電話だ。
内容は、工事が一向に進んでいない、というものだった。
話を聞いてみると、すでに基礎が完成してから2ヶ月間そのままらしい。
基礎の一部が打ち合わせ内容と異なるという申し入れを担当営業に入れてから、工事が進んでいないようだ。
すぐに営業と連絡を取るも、泊まりがけの研修中で連絡が取れない。
代わりの者をすぐに現場に手配、現況を調査した。

打ち合わせをしてくれない

基礎までしか出来上がっていない現地で、電話主の既契約者と話をした。
その方曰く、担当営業が忙しいとのことなので、基礎の打ち間違いを指摘した文書をFAXと簡易書留で送ったとのこと。
その控えも見せてもらった。
確かに、変更前の基礎を打設している。
そこで、設計を担当した者に連絡をして、事実関係を確認したところ、基礎の変更指示はもらっていなかった、との回答。
では、なぜ基礎で止まってしまっている状態を放置したのかを聞くと、担当の営業からストップがかかっていたらしい。
基礎打設の指示をかけた現場監督とその上司も現場に呼び、この状況を説明させたところ、やはり営業がストップをかけていたとのこと。
契約者は、設計士と監督の二人の話を聞いてこう言った。

「担当の営業に基礎が間違っていると指摘したところ、(基礎を正しく打ち直しますので再度指示をください)と言われたため、また間違えられたら嫌なので直接打ち合わせしたいとお願いしたら、(今忙しいので打ち合わせが出来ない。しばらくして落ち着いたら連絡する)と言われたっきり、何の音沙汰もないので、書類と変更図面を送ったのだが、それでも何の連絡もないため、しびれを切らし今日に至った」

何でもっと早く電話で連絡してくれなかったのか悔やまれるところだが、とにかく事実関係を明確にするためにも営業になんとかして連絡を取る必要がある。
その営業が参加している研修は、外部からの連絡が研修中は出来ず、今すぐ連絡は難しい。
そんな状況で営業に連絡を取れたからと言って、ただちに状況が改善するわけではなさそうだ。

担当営業の変更

今この時点で、担当営業を変えることを決断、契約者も許諾したため、その場で基礎の変更の打ち合わせをはじめ、今後の工程を細かに説明して、何とか事なきを得ることが出来た。
2ヶ月も工事が進んでいないという大変な問題を、苦情になることなく対処できたのは、「担当営業の即時変更」を決断したことだろう。
その担当変更が、最終的にはお客様から感謝されることになった。
それはそれで良いことだが、どうして営業は現場をストップ指示したのだろうか?
研修から戻ってきた営業に説明を求めたところ、
「契約者がなかなか返事をしないから返事待ちしていた。返事をもらうまで現場をストップしてもらった。」
とのことらしい。
契約者の話とは違う。
忙しいから打ち合わせできない、と言ったそうだが、それはどうなんだ?と聞くと、
「忙しいと言ったのは自分ではなくてお客のほう」
これも契約者の話と違う。
FAXや書留で変更図面や書類を送ったらしいが受け取っていないのか?と聞くと、
「両方とももらっていない」
これまた水掛け論。

営業のキャパシティ

営業の外出を見計らって、担当のキャビネットを開けてみた。
見るに堪えない乱雑な書類の山。
整頓していないファイル。
どの現場のものか分からない図面と仕様書。
この営業は、整理整頓の出来ない人間であることは一目瞭然だった。
その引き出しの中に、封の開いていない書留の封筒が一通。
差出人は、例の工事が進んでいない契約者。
思った通り、受け取っていた。
そして、ご丁寧に、FAXで送られたものまできれいにたたんでフォルダに挟まっている。
この営業への叱責・指導は担当上司に任せ、書類を抜き取り新担当者にそれを渡した。

結局の所、自分のキャパを超えて仕事を受けたために起こったミス。
しかしその営業が抱えていた物件数は、その営業所で最も少なかった。
つまり、キャパが低かったと考えるべきだろう。
事実、最も成績の悪い営業マンであったことは言うまでもない。
その営業は、トラブルになりかかった本物件の完成を見ることなく会社を辞めていったが、この事態に何の解決策も講じず、是正案も掲げなかった営業の上司については降格となり、別の支店へと転勤していった。

お客様の声

大幅に遅れた工事も何とか完成にこぎ着け、無事引き渡しとなり銀行の金消契約に同席した時の話。
どうして、例の営業から買ったのか?と聞いてみたところ、

「土地の購入を先に済ませたため、一日も早くメーカーを決めたかった。営業なんて誰でも良くて、値段が折り合えばそれで良かった」

こういう考え方が結局は自分たちの首を絞めてしまったと言うことを、今回身に染みて感じたという。
そして、営業次第で、こんなにも気持ちよく家が建つんだ、と言うことも知ったという。

家を建てるのは営業ではない。
しかし、お客様が気持ちよく完成にこぎ着けるようにする役割を営業は担っているということだ。
営業の能力を見誤ると、このような目に遭うことがあると言うことを肝に銘じていただきたい。

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